ハダカデバネズミについて研究している著者(2人)によるハダカデバへの愛があふれる本。
私は上野動物園でよくハダカデバを見ているけどマニアじゃないので、知らないことや見聞きしたはずなのに忘れていたことがたくさんあって、読んでて「へぇ〜へぇ〜」の連続だった。
思わず「ハダカデバってこんなに変でおもしろい生き物なんだよ」と言って歩きたくなったのでこれを書いている。
ハダカの理由は寄生虫にたかられないからというのが有力だそうだ。
環境の安定している地下で生活するため体温調節機能も捨てた。哺乳類なのに変温動物!そりゃ飼育が難しいわけだ。
真社会性(繁殖する個体が限られていて、他の個体は自分は繁殖せず手伝いをする。要するにアリやミツバチのようなもの)だけど生まれながらに役割が決まっているわけではない。分業がはっきりしていない部分もある。
女王も生まれつき女王ではなく、女王になってからも威厳を見せてコロニーを統率しないといけない。
外からコロニーとして連れて来たのに争いが始まって群全滅寸前になったとか。
上野動物園だったか、コロニーの力関係が不安定で子育てがうまくいかず結局子供が全員死んでしまったというのもあったっけ。
働きデバの中に新生児を保温するための「肉ぶとん」役がいる。
兵隊デバは戦いもするが、天敵(ヘビ)の犠牲となって群を守る(飼育下では事実上無職?)。
寿命が長い(並みのねずみの10倍)。妊娠期間も長いし産仔数も多い。出産直前の女王はまるで地球外生物。
赤ん坊の写真も載っていて、しっぽが短いくらいでラットやマウスの生まれたてと大して変わらない。ただし彼らはいつまでたっても毛が生えてこないのだが…。
著者がアメリカから連れて来たハダカデバを研究室で飼育し始めるより前に、すでに埼玉県こども動物公園で飼育されていたそうだ。当時の飼育担当だった日橋氏(現園長)の文章もちょっと載っている。
さいたま恐るべし。
ハダカデバがおもしろくていっぱい書いてしまった。
ハダカデバの魅力もあるが、一般の人にも難しくなく、でも飼育の苦労とかハダカデバへの愛がにじみでている文章なのでぜひちょっと見てもらいたい。
ちょっとお高いけど、べつやくれい氏のイラストとカラー写真もたくさんと超豪華(展示だとこんな超アップ見れない)。
東京都動物園協会のどうぶつと動物園2006年秋号にこの本の著者の記事があるのを見つけた(残念ながら市販はされていない)。本の内容の一部とかぶってるけど(というか研究内容だから)もしお手元にあれば読み返してみるといいかも。
岩波書店の情報ページ。いろいろ関連リンクもあり。